平成29年度 中嶋さんインタビュー

都立産業技術高専 学生インタビュー:ロボット工学コース 中嶋さん

5年 ロボット工学コース 荒川キャンパス
中嶋さん
ロボット研究同好会、スキー同好会所属
埼玉県出身

入学前に産技高専を知ったきっかけは何ですか

たまたま中学校1年生のときにテレビで観た高専ロボコンの大会です。2010年に開催された全国大会に、「歓声!Moment」という産技高専荒川キャンパスチームが作成したロボットが出場していました。その年の大会の課題が「二足歩行ロボットが乗り物に乗った人をゴールまで運ぶ速さを競う」というものだったんですが、多くの高専のロボットと違い「歓声!Moment」は、ロボットの中に人間が乗り込み、円形になった外郭が回転して、人間を水平に保ちながら前進するという画期的なもので、感動しました。

「歓声!Moment」のテストの様子

入学することを決めた理由は何ですか

都立産業技術高専 学生インタビュー:ロボット工学コース 中嶋さん

ロボコンをテレビで観て自分もロボットをつくってみたいと思ったからです。それまではロボットに全然興味はなかったんですが、ロボコンを観た後に、中学校にロボコン部があることを知って、とりあえず入部して、毎日ロボットの製作をしていました。元々、産技高専に行きたいなと思っていましたが、体験入学にも参加して、「やっぱりロボット製作に関わる技術を専門的に勉強できるし、普通の高校に入学しても絶対にできないだろうから、産技高専でガッツリやってやろう」と思って入学しました。
ただ、中学校の先生たちには応援されたんですが、母親には産技高専への進学を反対されました。「わざわざ東京まで行くよりも、普通に高校へ進学して、大卒の資格を取ったほうがいいんじゃないか」と言われました。でも、どうしても入学したかったので、ひたすら中学でのロボコン部での活動をがんばって、自分の意志を行動で示しました。それを認めてくれたのか、最後には進学を許してくれました。

入学したら、何をしたいと思っていましたか

とりあえずロボコンに参加したいと思っていました。逆にロボコン以外のことをあまり考えていなかったです。
ロボット研究同好会に入って、1年生のときに応援者としてロボコン全国大会の会場に行って、中学生のときのロボコンとは規模が違うし、周りからの注目もすごかったので、圧倒されました。
本当は応援者ではなく、操縦者として参加したかったんですが、操縦者は2人までと決まっていて、4人いる一年生で取り合って喧嘩しました。やっぱりみんなそれがしたくて同好会に入ったし、意見がぶつかってしまいました。でも、意見を言い合うことも大切だなという勉強になったので、逆に今は後輩があまり意見の言い合いもしていないので、「もっとしたらいいのに」と思っています。

入学後に、入学前と比べてギャップを感じましたか

ものづくりの学校だから、授業でもたくさんものを作るんだろうなと思っていたら、実際はそんなことなく、数学などの座学も結構多かったです。

女性で高専に入学することに不安はなかったですか

特にはなかったです。実際に入学してからもとても居心地がいいなと思っています。
中学校の三者面談のときに母親が先生に「本当に高専で大丈夫ですか」と聞かれて「生息地に返してあげるようなもんだから大丈夫です」と言っていましたが、本当にそうだなと今では思います。

中学生のころはどんな中学生でしたか?

中学校のときはロボコン部の部長を務めていました。他にはテレビゲームをしたり、インターネットをしたりして遊んでいました。中学校は生徒が多くて、集団行動が多くてちょっと窮屈に感じてはいました。

産技高専の校風はどんな感じですか

中学校とは違って、とても自由です。入学当時は結構な衝撃でした。学校にお菓子を持って来てたり、教室で休み時間にパソコンやゲームをいじっていたり、入学式のときに金髪の子がいたりして、びっくりしました。好きな服を着ても怒られないし、ロボコン活動で遅くまで作業することもできます。このように個人のさまざまな表現を温かく受けとめてくれていいなと思いました。

今までの学校生活で一番嬉しかったこと、楽しかったことを教えてください

自分が設計した復動式シリンダーが動いたときは嬉しかったです。復動式シリンダーは、身近なところだと、電車のドアに利用されています。電車のドアはそのシリンダーに空気を入れて閉じたり、逃がして開いたりしています。もちろん既製品では存在しますが、価格が高いのと、自分で工夫したかったので、自作しました。空気を密閉するような機構なので、苦労しましたが、先輩からアドバイスをもらって完成させ、ロボットに利用できて嬉しかったです。あとはロボコンの大会も楽しかったですし、スキー同好会のみんなと高専祭*1でコスプレしたのも楽しかったです。

*1 高専祭・・・毎年秋に開催している荒川キャンパスでの学校祭の名称。品川キャンパスは産技祭

逆に一番辛かったこと、悔しかったことを教えてください

都立産業技術高専 学生インタビュー:ロボット工学コース 中嶋さん

これもロボコンですが、一時期何もうまくいかず「辞めたい!」と思ったことがあります。ロボットが自分の思うように動かなかったり、スケジュールが押されていて、人間関係が悪くなって傷つけあったりした時期は本当に辛かったです。
また、自分の実力のなさを悔しいなと思ったことがあります。ロボコンの大会に向けて機械班のリーダーとしてロボットの製作をしていました。ただ、機械班の設計がうまくいかず、電子班のリーダーに「今までちゃんとロボットを設計したことがあるのか」と責められ、言い返せずに悔しい思いをしました。ただ、言い返せなかったことよりも、ちゃんとロボット丸々一台つくるくらいの気持ちで、それまでにしっかり経験を積んでいればそんなことも言われなかったのに、やってこなかった自分が一番腹立たしく、悔しかったです。

2年次でのコース選択は迷いましたか

正直、医療福祉工学コースとそこまで違いがわからなかったのですが、先輩に自分がやりたい研究があるところのほうが良いよとアドバイスされたのでロボット工学コースを選びました。
実際、入ってみたら、研究の幅も広く、先生も優しく指導してくれますし、授業では多くの知識を学ぶので、それを上手く使えば、本当に何でもつくりたいものをつくれちゃうんじゃないかなと思いました。専門科目の実習も面白く、工作機械を使えるようになると、自分のものづくりの幅を広げられ、将来の道が広がったように思います。

今の研究内容について教えてください

材料系の研究室で七宝焼き*2を研究しています。3年生の後半くらいから研究室説明会があって、今の研究室の先生が「七宝焼きをやります」と言っていて、面白そうだなと思ったので入りました。だいたい材料系の研究室は金属を伸ばしたり曲げたりしていて、あまり興味を惹かれなかったのですが、七宝焼きはガラスの粉を800度で溶かして、様々な色を表現でき、美術的な観点もあって、たのしそうだなと思いました。今は色の識別や成分分析を積み重ねてデータを集めていて、そのデータを利用し、職人の方のように様々な形の七宝焼きをつくることができる、AI搭載のロボットを製作したいと思っています。

*2 七宝焼き・・・金属工芸の一種で伝統工芸技法のひとつ。金属を素地にした焼物。金属素地に、釉薬をつけ、800度前後の高温で焼成することによって、融けた釉薬により美しい彩色が特徴。

卒業後の進路に就職を選んだ理由は何ですか

大学に行って研究したいことがなく、自分には就職のほうが向いているかなと思ったので就職の道を選びました。高専で学んだ専門分野を活かせる企業に就職できるとも考えたことも理由です。
就職先では設計・技術系営業をする予定です。工業用ミキサーをつくっている会社で、設計したものを購入していただいたり、工場に設置したものをサポートしたりします。全くの未経験で、全然スキルもないので不安に思うこともありますが、挑戦したいなと思いました。

産技高専を志望する方へのメッセージ

産技高専は自由なので、遊ぼうと思ったら結構遊べます。ただ、最終的に就職や進学をするときになって、自分の高専生活でやってきたことは遊びしかないという状況になってしまうので、自分が胸を張って「これをやったよ」って言えるようにがんばってほしいと思います。

都立産業技術高専 学生インタビュー:ロボット工学コース 中嶋さん

「一番思い入れのあるものを持ってきてください」とお願いしたら「やっぱりこれです」と持ってきていただいた作業着。5年間、実習やロボット製作の際に着用していたものです。


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