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都立高専コラム

生活に役立つものづくりとは?医療・福祉分野から見る製品事例

「医療や福祉の分野で、どんなものづくりが行われているのだろう?」
「技術を使って人の役に立つ仕事がしたいけど、具体的にどんなことができるの?」
などの疑問はありませんか?

医療・福祉分野のものづくりは、高齢者や障がいのある方、病気やけがで困っている方々の生活を支える技術です。ロボット技術、センサー技術など、さまざまな技術を組み合わせて、人々が安心して快適に暮らせる製品を生み出しています。

この記事では、医療・福祉分野で役立つものづくりの事例について解説します。

この記事を読むことで、医療・福祉分野のものづくりがどのように人々の生活を支えているのか、具体的なイメージを持つことができます。将来、ものづくりを通じて医療・福祉分野に貢献したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、東京都立産業技術高等専門学校(都立産技高専)の医療福祉工学コースでは、電気電子工学・機械工学・情報技術の3分野を学び、あらゆる分野で活躍できる技術者を育成するための実践的なカリキュラムを用意しています。医療・福祉分野のものづくりに興味がある方は、ぜひサイトをご確認ください。

>>東京都立産業技術高等専門学校の医療福祉工学コースを確認する

医療・福祉分野で役に立つものづくり事例

医療・福祉分野では、人々の生活を支えるさまざまな製品開発が進められています。ここでは、実際に日常で利用されているものづくり事例や、都立産技高専の教員が行っている研究・開発事例を紹介します。

日常の行動をサポートするものづくり

日常の行動をサポートするものづくりとは、例えばベッドから車椅子への移動や、車椅子からトイレへの移動など、「当たり前の動作」を、誰もが安心して行えるようにするための技術です。
介護を受ける人の尊厳ある生活を支えると同時に、介護者の身体的負担を大きく軽減し、腰痛などの職業的リスクを防ぐ役割も担っています。

移乗介助を支援する技術の事例としては、介護ロボットが挙げられます。介護ロボットには「装着型」と「非装着型」という2種類があります。装着型は、介護者が身につけて使用するタイプで、パワーアシスト機能により持ち上げる力を補助してくれるのが特徴です。非装着型は、リフトのように要介護者を機械で持ち上げて移動させるタイプで、より重度の介護が必要な方に適しています。

介護施設や病院では、スタッフの人数が限られている中で、多くの方のケアを行わなくてはなりません。このような支援技術の導入により、介護者一人でも安全に移乗介助ができるようになり、介護の質の向上にもつながっています。

高齢者の安全を24時間守るものづくり

高齢者の安全を守るものづくりは、高齢者の状態を監視し、異常があれば家族や介護施設のスタッフに通知することで、転倒や急な体調変化といった緊急事態の早期発見に役立っています。

例えばセンサーで部屋の温度や湿度などを記録する、扉の開閉を感知するなど、生活パターンの変化を検知する技術が挙げられます。暑くてもエアコンをつけない、トイレの回数が急に増えた、夜中に何度も徘徊するなど、普段と異なる行動があればアラートを出して知らせてくれます。こうした技術は、一人暮らしの高齢者が安心して生活できる環境づくりに、欠かせない存在です。

正確で安全な手術を支援するものづくり

医療現場では、より正確で安全な手術を実現するため、手術支援ロボットや手術支援デバイスの開発が進められています。

手術支援ロボットは、外科医の手の動きをロボットアームに伝えることで、精密で正確な手術を可能にする技術です。これにより、患者の身体への負担が軽減され、回復期間の短縮にもつながります。

都立産技高専の青代敏行准教授は、手術支援デバイスの開発に取り組んでいます。これまでに、血管吻合(けっかんふんごう:血管と血管を縫い合わせること)をより容易に行うことができるデバイスを提案してきました。現在は、腹腔鏡用鉗子(ふくくうきょうようかんし)を利用した、手術トレーニングの数値化を可能とする器具の開発を進めています。

ものづくりによって、医師の技術向上を支援することは、より安全な医療の提供につながっています。

脳の仕組みを理解するためのものづくり

ものづくりの分野では、人間の脳の仕組みを理解する研究も進められています。その一つが、電子回路を使って人間の脳の働きを再現しようとする「脳型コンピューター」の研究開発です。

従来のコンピューターは、決められた手順に沿って高速に計算することを得意としてきましたが、人間の脳のように柔軟な認識や判断を行うことには限界がありました。そこで、脳がどのように情報を処理しているのかという仕組みをヒントにして、新しいコンピューターの形を考える取り組みが行われています。

都立産技高専の後藤和彦准教授の研究室では、視覚誘発電位を用いた脳機能評価の研究が行われています。視覚誘発電位とは、目から入った刺激に対して脳がどのように反応するかを脳波で測定する方法です。脳波計と視覚誘発電位記録装置を使用し、記録から解析、評価まで一貫して行うことで、脳の仕組みを明らかにしています。

認知症の早期発見と予防に関わるものづくり

超高齢化社会において、認知症の早期発見と予防は重要な課題です。ものづくりの分野でも、認知症の兆候を早期に捉えるための技術開発が進められています。

認知症は、症状が顕著になった段階で医療機関を受診するケースも多く、その時点でかなり進行していることがあります。早期に発見できれば、生活習慣の見直しや適切な介入により、症状の進行を遅らせられる可能性があります。こうした背景から、血液検査など、身体的・経済的負担の少ない方法で認知症のリスクを評価する技術が研究されています。

都立産技高専の福田恵子教授の研究室では、認知症による機能低下の把握に向けた脳機能評価手法の研究が行われています。近赤外分光法(NIRS)という体を傷つけない計測方法を用いて、脳トレーニング課題や運動課題の効果を脳機能の観点から把握する研究です。脳機能定量評価に向けた評価条件の策定や、健常者を対象とした計測に取り組むとともに、脳反応領域の推定などの解析手法の改善を図っています。

リハビリを支援するものづくり

リハビリは、失われた機能を回復させるために欠かせないプロセスです。病気やけがにより身体機能が低下した方のリハビリを支援するために、さまざまな訓練装置や支援機器の開発が進められています。

例えば、歩行訓練、手指の訓練、上肢(肩・腕・手)の訓練など、目的に応じた専用の装置が開発されています。患者の状態に合わせて適切な負荷を調整し、安全にリハビリを進められる環境を提供するものづくりです。

都立産技高専の柴田芳幸准教授は、マッキベン型空気圧人工筋を用いた免荷式歩行訓練装置の開発を行っています。この装置は、歩行訓練時の体重負荷を部分的に軽減することで、負担を抑えた歩行訓練を可能にする仕組みです。

そして、同校の青代敏行准教授の手指リハビリ支援機器も、リハビリ分野で重要な役割を果たしています。脳卒中患者や手指に障害を抱えている患者を対象に、リハビリの基本動作に関して高い識別精度が得られるアルゴリズムを開発しています。

障がいのある方の生活の質を高めるものづくり

障がいのある方が自立した生活を送れるよう、近年は補助器具や支援機器の開発が進められています。

上肢装具、歩行補助具、コミュニケーション支援機器など、障がいの種類や程度に応じた多様な製品が開発されており、日常生活における「できない」を「できる」に変える技術は、障がいのある方の生活の質向上に大きく貢献しています。

都立産技高専の田宮高信教授の研究室では、フレキシブルシャフトの上肢装具開発への応用研究が行われています。フレキシブルシャフトは、構造面で工夫が施されており、比較的自由に動力伝達方向を変換することができます。この性質を利用して能動型上肢装具の動力伝達に応用し、上肢に障がいのある方の生活の質向上にチャレンジしています。また、超弾性合金を動力伝達軸として応用した小型ロボットハンドの開発も実施しており、繰り返しねじり負荷を加えた条件における機械的特性の研究が行われています。

また、同校の冨田宏貴教授は、静圧空気軸受の高度化に関する研究を行っています。静圧空気軸受は、精密な工作機械や測定機の回転案内機構で、回転精度0.1μm以下の高精度な回転運動を実現する超精密機械要素です。この技術は、将来的に障がいのある方向けの精密機器の開発にも応用可能な、重要な基盤技術となります。

高齢者の生活をサポートするものづくり

高齢者が安全に自立した生活を送れるよう、日常生活を支援する製品の開発が進められています。

高齢になると、運転能力の低下、転倒リスクの増加、身体機能の衰えなど、さまざまな課題に直面します。こうした課題に対して、技術でサポートし、安心して暮らせる環境を整える取り組みが行われているのです。

都立産技高専の古屋友和准教授は、高齢ドライバー向けの情報提示に関する研究を行っています。視線の動きや身体の動作、運転操作データなどからドライバーの注意状態を推定し、適切なタイミングでの注意喚起を行う技術の開発に取り組んでいます。高齢の方でも直感的に理解しやすい情報提示を実現することで、安全運転を支援します。また、高齢者に向けた自動車の乗降支援の研究も行われています。乗降動作は、身体を支えながら足を曲げて車内に入るため、高齢者にとって負担の大きい動作です。この負担を軽減するための支持具の開発や、乗降しやすい車体形状などの研究を通じて、高齢者の移動の自由を支えています。

また、同校の吉村拓巳教授が取り組む人体用転倒エアバッグも、高齢者の安全を守る重要な技術です。転倒による骨折は、高齢者の寝たきりの原因となることも多いため、転倒を検知して瞬時に身体を保護する技術は、高齢者の健康寿命を延ばすうえで大きな役割を果たします。

骨の再生をサポートするものづくり

骨折や疾患によって骨が欠損した場合、体の自然な治癒力だけでは十分に回復ができないケースがあります。こうした課題に対して、医療分野のものづくりでは、骨の再生を人工的に支援する材料や構造体の開発が進められています。

都立産技高専の杉本聖一准教授の研究室では、水熱ホットプレス法を用いた骨再生Scaffold(スキャフォールド)の開発が行われています。水熱ホットプレス法は、多孔質でありながら高い強度を持つ材料を作製できる手法です。この技術を用いて、高強度な多孔質水酸アパタイトやリン酸三カルシウムの開発を試みています。多数の孔を持つ材料は、骨細胞や血管が内部へ侵入しやすく、かつ十分な機械的強度を確保できるため、より安全で効果的な骨再生治療につながります。走査型電子顕微鏡やX線回折装置などの分析装置を用いて、材料の微細構造や特性を詳細に評価しながら、より高性能な骨再生材料の実現を目指しています。

産業技術高等専門学校で人々が快適に生活できるしくみ(技術)を学ぶ

医療・福祉分野のものづくりは、私たちの生活のさまざまな場面で活躍し、社会全体の課題解決に貢献しています。病院での診断・治療から、高齢者の日常生活支援、リハビリテーション施設での機能回復訓練まで、その応用範囲は広がっています。特に超高齢化社会を迎える日本において、今後ますます重要性が高まる分野です。

ここまで紹介してきた医療・福祉分野のものづくりの事例の一部は、東京都立産業技術高等専門学校の医療福祉工学コースの教授・准教授が取り組んでいる研究内容です。

東京都立産業技術高等専門学校の医療福祉工学コースでは、医療や福祉の分野をテーマとしながら、電気電子工学、機械工学、情報技術という3分野を学べます。あらゆる分野で活躍可能な技術者を育てることを目指しており、ものづくりに必要な基礎から応用まで、実践的な技術を身につけられる環境が整っているのが特徴です。

医療・福祉分野のものづくりに興味があり、人の役に立つ技術を学びたいと考えている方にとって、東京都立産業技術高等専門学校のような専門的な教育機関で学ぶことは、将来の選択肢を大きく広げるきっかけになります。興味がある方は、ぜひ詳細を確認してみてください。

>>東京都立産業技術高等専門学校の医療福祉工学コースを確認する

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