卒業生インタビュー

特別版
都立産業技術高専 卒業生インタビュー:石出さん

【特別版】石出さん
平成14年度 東京都立航空工業高等専門学校 電子工学科卒業
陸上競技部、宇宙科学研究同好会所属

現在 NECネッツエスアイ株式会社 所属
平成31年1月インタビュー

石出さんは、本校荒川キャンパスの前身校である東京都立航空工業高等専門学校の電子工学科で学び、卒業後は大学へ編入、大学院博士前期課程まで進学しメーカに就職されました。その後、NECネッツエスアイ株式会社へ転職し、現在はJAXAによる小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星探査プロジェクトで運用支援のお仕事をされています。今回は活躍した卒業生をご紹介する特別版として、現在のお仕事や本校での学びについて伺いました。

「はやぶさ2」について教えてください

小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星イトカワからサンプルを採集して2010年6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ*1」の後継機として開発されました。2014年12月に鹿児島県のJAXA種子島宇宙センターから打ち上げられ、2018年6月に目的の⼩惑星 「リュウグウ」上空に到着し、さまざまな探査を行っています。「リュウグウ」には太陽系が生まれた頃の水や有機物が、今でも残されている可能性があり、地球の⽔や⽣命の起源を調査するため、小惑星の表面の物質を持ち帰るサンプルリターンに挑戦しています。さまざまな観測、サンプルの採取を行った後、2020年に地球に帰還する予定です。

*1 はやぶさ・・・2005年夏に小惑星イトカワに到達し、その表面を詳しく観測してサンプル採集を試みた後、2010年6月、60億 kmの旅を終え、サンプルが入った地球帰還カプセルを地上に向けて分離した後、地球に大気圏に再突入した。地球重力圏外にある天体の固体表面に着陸してのサンプルリターンに、世界で初めて成功した。後に映画化やアニメ化された。

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はやぶさはやぶさ2

石出さんはどういったことをされているのでしょうか

神奈川県にあるJAXA相模原キャンパス内で、科学衛星を対象とした運用支援業務を行っています。現在は主に小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトチームの一員として、運用支援業務を行っています。「はやぶさ2」プロジェクトチームで日々の運用を取り仕切るJAXAのスーパーバイザーと確認しながら、手順書に沿ってコマンド(探査機への指令)を探査機に送信する業務です。

宇宙にコマンドを送信するというのは難しいのでは?

そうですね。現在、地球から「はやぶさ2」までは約3億3千万km*2の距離があり、光の速さで片道約20分も掛かります。主に長野県佐久市にある直径64mの大型パラボラアンテナで通信を行いますが、往復約40分の時間差を考慮した作業が必要になります。コマンドはプロジェクトで承認された手順書の通りに送りますが、送信するときは約20分後の「はやぶさ2」の状態や、約40分後に「はやぶさ2」から地球に届くとても微弱な電波を受信する環境なども鑑みないといけないため、先読みのスキルが必要になってきます。宇宙だけではなく、地上の天気なども気にしています。

*2 3億3千万km・・・東京―新大阪間の新幹線の距離が約515kmと言われており、3億3千万km は320,388回往復するのに相当する。一日に一回往復したとしても878年掛かるとてつもない距離である。地球一周は40,075kmと言われているので、地球約8,235周分に相当する。

石出さんが勤務されているJAXA相模原キャンパスの管制室 写真提供(C)JAXA/ISAS

まさしく宇宙規模のお仕事をされている印象ですが、高専時代から宇宙に関わるお仕事をされたかったのでしょうか

高専時代は、所属した研究室がきっかけで衛星設計コンテストに参加したことから、宇宙科学研究同好会に所属していました。たしかに小さいころから宇宙が好きで、テレビや雑誌など良く見ていましたが、まさか自分が宇宙に関わる仕事に就くなど当時は考えてもいませんでした。編入した大学の研究室では移動体衛星通信用アンテナの研究に関わり、宇宙関係のつながりが続きましたが、大学院を修了した後は専攻した高周波の知識を活かし、電子部品メーカに勤めました。その後に現職の求人に出会い、宇宙への憧れがありましたので一念発起し、チャレンジしてみることにしました。

では、高専時代はどんな勉強をされていたのでしょうか

私は小さいころからものづくりが好きな子供だったので、中学三年のときに参加した体験入学で「自分にはここしかない!」と高専に惹かれました。中学時代にWindows95が発売された影響で電気電子分野に強い興味を持っていたため、当時の電子工学科へ入学することにしました。低学年のうちは幅広く工学分野を勉強した後、高学年ではより専門的な教科を学んで、研究室では通信工学の分野を集中して研究していました。通信工学を自分の技術者としての「柱」にしようと思って、高専卒業後は国立大学の学部へ編入し、その後大学院まで進学して高周波について研究していました。

高専と大学の学びで違いはありますか

高専は、なんと言っても学生実験を通じた学びが多かったと思います。高専での学びは「○○工学概論」や「○○理論」といった数学を応用した授業が多数ありますが、それが机上だけで終わらず、学生実験を通じて実際に現象で体験する学習スタイルだったので、深い理解につながっていたように思います。特に高専の学生実験で提出するレポートは、担当の先生に受理してもらうために厳しい口頭試問を乗り切る必要があり、より力になったと感じます。このような経験をしていたので、大学では口頭試問が無く、期間内にレポートを提出して、成績をつけてもらうという方式に若干のギャップを感じたことを覚えています。振り返れば一人ひとり、口頭試問で理解の確認を行っていただける高専の環境は大変ではありましたが、今思えば非常にありがたいことなのだなと感じています。

高専時代の学びや経験は今のお仕事に役立っていますか

高専で得た幅広い工学分野の知識は非常に役立っています。「はやぶさ2」は深宇宙で活動できるように様々な機器やセンサーを搭載しています。運用する上で、それらの各機器の専門家により検討された方針が、運用チームに伝えられ、スーパーバイザーと確認を行いながら、手順書に沿ってコマンドの送信が行われます。このとき高専で得た通信分野や情報分野、制御分野などといった知識のおかげで、これからどのようなことをしたいのかを大まかにでも感じ取ることができていると思います。このことにより自分でも納得して作業することができ、これは安全かつ意義のある運用につなげられていると思っています。

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:石出さん

働く上で大切にされていることを教えてください

様々な仕事をしてきて、苦労しながら達成し、お客様から感謝を伝えられたとき、いつもある言葉を思い出します。高専時代の研究室恩師であり、元航空高専校長の島田一雄先生にかけていただいた「技術者冥利に尽きるよな」という言葉です。自ら勉強し獲得した技能を用いて、何かに貢献することができるように、技術者としてあきらめず泥臭く取り組むことを大切にしていきたいと思っています。

今後の夢を教えてください

引き続き宇宙分野での技術者を目指していきたいと思いますが、この分野で身に付けた「ミスを起こしにくくする確認や作業のスキル」を他の分野でも活かせる技術者になりたいと思います。また、遠い将来では、一人の宇宙好きとして未来の技術を担う子どもたちに、少しでも宇宙分野に興味を持ってもらえるような活動をしていきたいと考えています。

管制室にて運用支援業務を行う石出さん 写真提供(C)JAXA/ISAS

最後に受検生や在校生に向けてメッセージをお願いします

高専の課程はとても大変であることは間違いありませんが、中学校を卒業してすぐに工学の道を進む決意をしたみなさんには、興味をそそる楽しいことや最適な環境があることも間違いありません。恵まれた施設やカリキュラム、専門性の高い先生方、同じ方向を向いている同級生や先輩がいる環境で、自分が興味を持つ分野を発見し、基礎を学び、そして卒業研究で自分の中に一つの「柱」を作れるように頑張ってください。その柱を持って卒業すれば、技術者として大きく活躍できると思います。

(インタビュー後)2月22日のタッチダウン成功おめでとうございます。感想を頂けますでしょうか。

歴史的なミッションに運用支援者として立ち会うことができ、大変うれしく思います。今後も重要なミッションが続きますが、引き続き安全で正確な業務を遂行して「はやぶさ2」が地球にサンプルを持ち帰るまで無事に役目を果たして行きたいと思っています。


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