阪口さんインタビュー(平成29年12月)

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:阪口さん

阪口さん
平成22年度 機械システム工学コース卒業
水泳部所属
現在 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社所属
平成29年12月インタビュー


阪口さんは、品川キャンパスの機械システム工学コースで学び、卒業後は外資系企業で臨床用検査薬および検査機器を取り扱うロシュ・ダイアグノスティックス株式会社へ就職しました。本校が東京都立産業技術高等専門学校に統合された第一期生で、本校や企業での挑戦や学びについて今回伺いました。

産技高専を志望された理由は何ですか

当初は普通高校への進学を考えていたのですが、「将来はロボットとかつくって仕事したいなー、エンジニアとかカッコイイなー」と考えていたところに、親から産技高専を教えてもらったのがきっかけです。専門的な授業を早い段階で受けられる事と、早く就職でき、就職率も良い事に魅力を感じ、志望しました。
中学3年生の選択授業で「技術」の科目を受講して、少しずつ自分にできることが増えることが楽しくって、漠然と「ものづくり」をする将来を考え始めたときに、親に「こういう学校もあるよ」と産技高専を紹介されました。

早く就職したかったのはなぜでしょうか

正直、はっきりとはわかりません。就職してバリバリ活躍したい思いもあったし、勉強するのもいやだなあと思っていました。

機械システム工学コースを選んだ理由は何ですか

当初はロボット工学コースに進むつもりだったのですが、1年生のときは家から近いという理由で品川キャンパスに通っていました。品川で水泳部に入り、1年生の後半に副部長に任命されたことと、クラスの半分以上が機械システム工学コースへの進学を希望していたこともあって機械システム工学コースへ進みました。
それに、産技高専になってから、1年生のときに様々な分野のことが勉強・実習できるようになって、「こういうのもあるんだ」と視野が広がっていたので、「機械システム工学コースでも、やりたい勉強はできる」と考えて、部活動などとのバランスを鑑みつつ、機械システム工学コースにしました。
実際に、水泳部では2年生からずっと部長をして活躍できたし、所属していた研究室でも医療系のロボットのことを勉強でき、当時の友人とは今でも交流があるので、自分にとっては正しい選択だったと思います。

産技高専時代に印象に残っている授業はありますか

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:阪口さん

実習関連の授業はすべて印象が強いです。特に入学して初めの実習が印象に残っています。アーク溶接や鋳物の実習で、まさに「職人」って感じがして興奮しました。他にも中学校時代には考えられなかったほど大きな機械や、逆に本当に小さな機械をつかってものづくりをして、自分がエンジニアになる道を歩んでいることを実感していました。
また、高学年に進むに従い、他の授業で習った科目との結びつきが濃くなり、「あの時の授業はこうやって役に立つのか!」と学習意欲が増していったのを覚えています。例えば、流体の実習のときには数学で習った積分を利用し、流量を求めたりしました。

 

産技高専で学ぶことのメリットや良い点を教えてください

若いうちから専門的な事を勉強できるのが最大のメリットだと思います。
また、程度の差はありますがほとんどの人が自分の将来像をもっています。1年生のコース選択のときに同じクラスの人とどのコースにするのかということを話し合う延長線で、将来どういうことがしたいかといったことを話し合いました。「周りの人はこんなに将来のことを考えていて、自分もちゃんと考えなきゃな」と大きな刺激になったので、その環境で5年間過ごせたことは非常に良い経験となりました。

産技高専時代にやり残したことはありますか

ロボコンにチャレンジしたかったです。中学生のときは、人が入っていけないところで活動できる救助用のロボットをつくりたいなと思っていたので、そのために産技高専に入学したら、ロボコンに参加しようと思っていました。
ただ、授業の中でロボコンに関することは学べると思っていたのですが、実際には部活動で参加しているということを知らず、すでに入部していた水泳部と学業との両立が難しいと考えてあきらめてしまいました。
機械システム工学コースにいたので、ハードウェアの分野には強いのですが、ソフトウェアの分野ではまだまだ努力の余地があって、ロボコンをやっていればそのあたりの力も身に付いていたのかなと思います。

今、会社ではどのようなお仕事をされていますか

臨床検査薬および検査機器の会社で、CS(カスタマーソリューション)部門サービス企画チームに所属して、主に現場エンジニアの活動分析や改善提案等を担当しています。臨床検査とは、病気の有無や程度を調べることです。そのための機器や薬を扱っているので、お客さまは大病院や検査センターとなります。
採用されたときには「病院などの現場で製品の点検等をしてもらいます」と言われ、実際に入社してからは、製品のことを知るために工場にて製品の品質確認テストを二年間、病院での保守点検や修理業務を一年半くらい担当しました。ずっと現場で働いていくのかなと思っていたのですが、その後は本社管理部門にて部品管理を二年間担当して、今のサービス企画チームへ2017年4月に異動しました。今のチームでは、より良いサービスをお客様へ届けられるよう、エンジニアのパフォーマンス向上の為の取組みに従事しています。例えば故障率を下げ、お客様の満足度向上のためにはエンジニアが何をすればよいかを提案する等、入社時には全然想像していなかった仕事をしています。

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:阪口さん

想像していなかった仕事をしてみてどうですか

以前のチームに所属していたとき、「今後自分のキャリアをどうしていこうかな」と考えて、当時の管理部門の上司に相談しました。上司は親身になって相談に乗ってくれて、何パターンかのキャリアプランを一緒に考えてくれました。そんな中、予想もしていなかった新設するチームへの異動命令が出て正直「こんなこともあるんだなあ」と思いました。結構、会社では予想していないことが起こります。ただ、どんなことがあっても、自分の背景や経験を整理して、自分の強みというか“芯”みたいなものができていれば乗り越えられると思います。例えば、私の場合は会社の中でいろいろと経験させてもらって、産技高専でも機械について5年間勉強していたので「自分の強みは機械だ」と思えます。

現在の進路(お仕事や研究)に進もうと思った理由は何ですか

学生のときは、将来、医療・ロボット・農業のいずれかの分野で活躍したいなと思っていました。産技高専で研究室を選ぶときになって、大腸ロボットを研究する先生と出会って、医療とロボットについて学ぶようになりました。自身が病気で悩まされた事もあり、学んだ知識や技術を活かして医療に貢献したいという気持ちが強くなって、医療系への就職を決意しました。そこで、今の会社と出会い、夢を叶えています。
今の自分は、巡り合わせによる部分も大きいのですが、そのときそのときの環境で、「今、自分に何が出来るか」を考えて行動してきた結果であるとも思います。こういった習慣や取り組み方が、何か予想していないことがあっても対応できる力になっているのかもしれません。

産技高専での学びや経験は今のお仕事等に役立っていますか

授業で習った事をそのまま使う場面は正直ありません。
ただ、先ほど言った物事への取り組み方を学び、粘り強く課題に取り組むことで培った忍耐力があるからこそ現在の仕事ができていると思います。

働く上で大切にされていることを教えてください

「これ以上ない」を追及する事です。「これでもういいかな」という気持ちで仕事をしていて、まかり通ってしまうこともあるかもしれませんが、後に必ずそれが原因で失敗します。私たちの仕事は、最終的に患者さんへ届けられるので、効率的な働き方や、周囲の先輩方への協力を得ながら、100%を目指す事が大切だと思います。

今後のキャリア展望や夢について教えてください

まだ漠然としていますが、折角外資系の会社に就職したので、海外勤務を経験したいと思っています。実際に先日スペインへ出張しましたし、海外と接する機会も増えてきたので、今から英会話教室に通って、将来に向かって努力しています。
最終的に、たくさんの方が医療の恩恵を受けられるように活動していきたいです。

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:阪口さん

「産技高専に戻りたいな」と思うことはありますか

今、自分がずっと歩み続けている実感がするので、戻りたいなと思うことはありません。ただ、自分がいたクラスを思い浮かべて、自由なクラスだったな…と思い返すことはしょっちゅうあります(笑)。今でも学生時代の友達に会いますし、良い思い出になっています。

最後に、受検生や在校生に向けてメッセージをお願いします

あまりにも自由な校風なため、在学中は自分をうまく律する事が大事になってくると思います。何もしなければ、何もしないでいられます。ただ、5年間鍛えられたことは社会にでても間違いなく通用します。
産技高専には、色んな先生がいて、設備もあって、学生が思い描いている大抵のことは実現できると思うので、自分の好きなことに、とことんのめり込んで欲しいですね。やらずに終わるのはもったいないです。
この間、久しぶりに見た中学校の卒業アルバムに「将来の夢はエンジニアになること」と書いていました。私は夢を叶えてエンジニアになりました。皆さんにも夢に向かって努力してほしいです。


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