平成29年度 小林さんインタビュー

都立産業技術高専 学生インタビュー:電子情報工学コース 小林さん

5年 電子情報工学コース 品川キャンパス
小林さん
ロボカップ研究部
東京都出身

入学前に産技高専を知ったきっかけは何ですか

小中学生のときに通っていた科学実験教室で知りました。元々、手先が器用な方ではないのですが、「こういうものをつくったら、こういうふうに役立てることができるだろうな」ということを想像することが好きでした。そういうものづくり、特にロボットへの興味から、教室に通い始め、その教室で中学生の頃からロボカップジュニア*1にも参加していたのですが、そのロボカップジュニアの大会で産技高専に行ったり、産技高専の学生にロボットのことを教えてもらったりして、産技高専に対しては良い印象を持っていました。

*1 ロボカップ・・・ロボットと人工知能の新しい標準問題として「2050年、人型ロボットでワールドカップ・チャンピオンに勝つ」ことを設定し、その研究過程で生まれる科学技術を世界に還元することを目標としている国際的ロボット競技大会のこと。

入学することを決めた理由は何ですか

色々魅力的な点があったことが理由です。早い段階から専門的なことを勉強できる。技術系の部活動*2が充実している。一般的な大学入試がなく、5年間課外活動や自分の好きなことをじっくりできる。交通アクセスが良い。これらの点が魅力的でした。
それに自分にロボットのことを積極的に、明るく教えてくれていた産技高専の学生のようになりたかったというのもあります。
「将来、ものづくりをやっていきたい」というのは小さい頃からずっと思っていたのですが、普通高校に行く自分と産技高専に行く自分を想像したら、産技高専に行くのがピッタリだなと思ったので、産技高専に決めました。

*2 技術系の部活動・・・産技高専には、電気通信部、省エネカー部、ロボカップ研究部、プログラミング研究部、航空工作部などものづくりに直結したクラブが多数あります。詳しくはこちら

入学したら、何をしたいと思っていましたか

都立産業技術高専 学生インタビュー:電子情報工学コース 小林さん

技術系の部活動に所属して、ロボコン等のコンテストで活躍したいなと思っていました。やはりロボットに関わることをしたいという気持ちが強くて、勉強以外にもロボットに携われる部活動に入りたいと思っていました。
実際に入学して、部活動を決める際には「高専ロボコン研究部」と「ロボカップ研究部」のどちらの部活動に入るか迷いました。高専ロボコンは、大きいロボットをみんなで製作するので、機械班や電気班といったグループに分かれてそれぞれの部分を担当します。それに対してロボカップは、少人数でロボットを製作するので、自分一人で担当・製作する部分が多く、機械的な設計や電気的な設計もする必要があり、様々なことを経験できるロボカップ研究部に入ることにしました。

入学後に、入学前と比べてギャップを感じましたか

進級するにしたがって、専門科目が増えてきたんですが、1年生のときは想像していたより一般科目*3が多かったです。 それに、ものづくりに精通した人たちばっかりが入学してくるのかなと思っていたんですが、そういう感じではなく、意外に興味ないような人もいて、それがギャップでした。でも、すごい人は本当にすごくて、時間的に余裕のあった1年生のときからもっと資格の勉強とかしておけばよかったなと思っています。 あとギャップではないですが、1年生のときに色々な実習を行い、各コースの特徴やどういうことを勉強するのかといったことを知ることができるので、入学前にコースを決める必要がなくてよかったなと思いました。

*3 1年次の一般科目について・・・産技高専では、1年次に混成クラスで共通の授業を受け、2年進級時にコースを選べるコース選択制が採用されています。詳しくはこちら

中学生のころはどんな中学生でしたか?

実は理系ではなく、どちらかというと文系でした。生物は特に苦手で、英語や地理、公民が好きでしたね。 技術の授業は得意で、学校外で教室にも通っていたので、ちょっと物足りなかった気はします。中学校の技術の授業では木工が中心だったというのと、「これをつくりなさい」というのが決まっていて自由度があまりなかったからかもしれません。

産技高専の校風はどんな感じですか

とにかく自由で、自主性を尊重している学校だと思います。中学校のころは、毎日先生がホームルームをして、持物チェックがあったり、管理されている感じがしましたが、そういうのもなく、自由だなと思いました。部活動もお金を渡されて、会計報告も自分たちでしないといけなくて、「学生自身で決めてください」っていうことが多く、それが新鮮で任されている感じがしました。

今までの学校生活で一番嬉しかったこと、楽しかったことを教えてください

3年次に海外インターンシップ*4に参加したことが楽しかったです。シンガポールにある外資系大手企業の関連会社で、造船所や石油プラントの従業員の作業を管理するアプリケーション製作を2週間(+語学研修を1週間)体験しました。現地の人の英語は早くて聞き取ったり、理解するのに苦労しましたが、専門科目や英語に対する学習意欲の向上につながりました。

*4 海外インターンシップ・・・平成28年度まで実施されていた国際化事業プログラムの一つで、国際的に活躍できるエンジニアを育成することを目的とし、3・4年の学生を対象に、海外の日系企業等でインターンシップを行うプログラムのこと。平成29年度はプログラムの改編に伴い、中止されています。その他の国際化事業プログラムについてはこちら

海外インターンシップに参加した理由を教えてください

将来、国際的に活躍できるエンジニアになるために実力をつけたいと思ったからです。なかなか他の高専や高校では、こういう国際的な取組を活発にやっていないし、せっかくあるんだから挑戦しようと思いました。
よく不安じゃなかったのかということを聞かれますが、不安はあまりなかったです。海外に行ってみたいなと思う気持ちが強かったというのもありますが、産技高専で受けていた「情報処理」というプログラミングの授業のなかで、英語で書かれたプログラミングの教科書を翻訳し、授業の予習をするという課題がありました。正直、大変な課題でしたが、そのおかげで専門の英単語も学べたので、現地でもある程度通用するのではないかなと自信を持っていたことも不安の軽減に繋がったと思います。

逆に一番辛かったこと、悔しかったことを教えてください

後悔していることは、レポートへの取組が甘かったことです。部活動等で時間を取られてしまったり、興味をあまり持てなかったりして、一つ一つのレポートにあまり真面目に取り組めませんでした。今、振り返ると「もうちょっとここを詳しく書けたのにな」とか「部活動等との調整ももうちょっとやりようがあったんではないかな」と思って後悔しています。

2年次でのコース選択は迷いましたか

都立産業技術高専 学生インタビュー:電子情報工学コース 小林さん

ロボットに興味があるけど、ロボットの分野で何がしたいのかって考えたときに「知能」のことを勉強したいなと思ったので、電子情報工学コースにしました。CAD*5でデザインをしていく授業が多い生産システム工学コースとも迷いましたが、電子情報工学コースの先生の熱意に惹かれて決めました。
コース選択前に、電子情報工学コースでは、英語で書かれた教科書を利用してプログラミングをするという話を聞いていました。それが理由で電子情報工学コースを選ばない学生も多かったんですが、先生に「こういう授業や講義を経験したら、世界で活躍できる技術者になれるよ」と言われて、ビシバシ鍛えてくれる熱意を感じました。実際に大変でしたが、海外インターンシップに行ったら、成長したことを実感しました。

*5 CAD・・・コンピュータ支援設計とも訳され、コンピュータを用いて設計をすること、あるいはコンピュータによる設計支援ツールのこと。

このコースで過ごしていて、良かったことや悪かったことはありますか

想像していたよりも、情報系だけでなく、電子系の授業も充実していて、半導体やコンピュータ・ハードウェア、ネットワーク等、コンピュータに関することを一通り学べたことが良かったことです。現在のロボットに関する研究においても非常に役立っています。 また最近は、世間一般でもAI*6を含むロボット開発における情報系分野への期待が高まっているので、情報系の基盤を自分の中につくれたと思うので、このコースで良かったと思います。

*6 AI・・・人工知能のこと。人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもののこと。

面白いと思った授業はありますか

「中小企業経営論」が面白かったです。東京都の中小企業同友会と連携した授業で、私が受講したときは、製鉄関系企業、コンピュータ関係企業、金型関係企業、サイバーセキュリティ関係企業の4つの経営者の方が来校して、経営するまでの経緯や、なぜ自分が技術者になったのかということを聞くことができて面白かったです。技術者としての生き方を学びました。さらに、中小企業同友会のプログラムで大連に視察へいくというものがあって、授業を受けた学生の中から選出されて同行させてもらったことも良い経験でした。
他にも、一般科目には専門分野とリンクしたものがあり、専門分野での力をより伸ばすことができたように思います。

今の研究内容について教えてください

ロボットに紙や布などの柔軟な物を操作させる「柔軟物マニピュレーション」という分野の研究を行っています。RGB-Dカメラ*7を用いて、ロボットが人と協調して布を折りたたむ方法について今は検討しています。所属する研究室では「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション*8」に関する研究を行っており、ゼミでは、人とコンピュータの関わり方(AR*9やVR*10など)について勉強し、そのときに学んだことを被験者実験を行う際に役立てています。それに加えて、ある大学の同分野を研究している研究室に毎週通って、学んでいます。

*7 RGB-Dカメラ・・・Red,Green,Blueのカラー画像に加え、Depth奥行き画像を取得できるカメラのこと
*8 ヒューマン・コンピュータ・インタラクション・・・人間とコンピュータ、あるいは人間と機械の接点におけるインタラクション(相互関係、対話型操作)に関する研究領域のこと。
*9 AR(Augmented Reality)・・・人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉のこと。拡張現実ともいう。
*10 VR(Virtual Reality)・・・現物・実物ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術およびその体系のこと。仮想現実ともいう。

卒業後の進路に進学を選んだ理由は何ですか

今研究している分野の研究を継続していきたいと思ったからです。まず、専攻科に進学して、その後、今すでに行きたい大学院の研究室があるので、そこに進学したいと思っています。
もし、普通高校に進学していたら、自分のやりたいことを基準に進学先を探すのではなく、大学の名前等で選んでしまっていたかもしれません。産技高専に入って18、9歳の早期からゼミに参加して専門的なことを勉強できたから、自分が本当に学びたい、研究したい分野や方向性を見つけることができ、それができる研究室に行きたいと思って進学先を見つけることができました。
自分が本当にやりたいことを見つけて、それを達成する道筋を見つけることができたので、産技高専に入ってよかったと思います。

産技高専を志望する方へのメッセージ

数学が得意だから、理科が得意だからという理由で産技高専を目指すよりも、自分の興味や関心と、産技高専で学べることが合っているかを目指す基準にしてほしいと思います。学校見学会や文化祭等に参加して、産技高専のことを知って、「産技高専のこの分野に興味がある」と思えたら、きっとその期待を裏切ることはないと思います。


▲Top