高橋さんインタビュー(平成30年6月)
高橋さん
平成22年度 本科 生産システム工学コース卒業
平成26年度 専攻科 機械工学コース修了
バドミントン部所属
現在 株式会社日本計器製作所 所属
平成30年6月インタビュー
高橋さんは、品川キャンパスの生産システム工学コースで学び、卒業後は一度大学に進まれ、再度本校の専攻科で学び、カーナビやロボットなどに組み込まれている冷却用ファンなどを製作している株式会社日本計器製作所へ就職しました。今回は本校や企業での実体験について伺いました。
産技高専を志望された理由は何ですか
中学生の頃、母親に勧められて体験入学*1イベントに参加したときに、3D-CADとCAM*2という機械を使って自分の名前のキーホルダーを作り、コンピュータによるものづくりを体験しました。そのときに自分がコンピュータ上で作図したキーホルダーが工作機械によって加工されていく様子を見て、「こんなにモノづくりって簡単にできるの?」と衝撃を受け、産技高専でものづくりを勉強したいと思うようになりました。
進路を決めるときは他の学校も検討していましたが、産技高専以外の高校では工学を勉強する考えはあまり有りませんでした。今振り返ってみると「どうせものづくりをやるんだったら5年間がっつりやりたい。ものづくりをやらないんだったら、普通高校を卒業して大学で将来のことを決めよう」*3と考えていたんだと思います。
*1 体験入学・・・毎年、中学生を対象に「夏のものづくり体験講座」を開催しています。(保護者の同伴可) 詳しくはこちら
*2 3D-CADとCAM・・・3DCADは工業製品や建築物の設計・製図を行うCADの種類の一つで、造形物を立体的に表示・編集して作図を行うもののこと。CAMはコンピュータ支援製造のこと。製品の製造を行うために、CADで作成された形状データを入力データとして、加工用のNCプログラム作成などの生産準備全般をコンピュータ上で行うためのシステムのこと。
*3 高専教育・・・高専では、大学とは異なり、中学校卒業後の早い年齢段階から5年間(専攻科進学の場合、7年間)一貫の実践的専門教育を行い、産業の生産現場での中堅的な役割を果たすことのできる技術者の育成を目指しています。
本科を卒業して、しばらくしてから専攻科に戻って来られていますね。
そうなんです。本科で機械工学を学んでいる中で、生活に身近な物をつくることが好きだと気付き、やがて建築設計の世界にも興味を持つようになりました。高専を5年間で卒業して機械工学の方面に就職するか、大学で建築設計を勉強するかの2択で迷いましたが、結果的に私立大学の建築学科への編入を選びました。*4
大学は今まで学んできたことと違う分野への編入になるので、3年生ではなく2年生へ編入し、3年間で卒業する計画を立てていました。大学編入では高専で取得した単位が大学の授業の単位に変換される制度があります。私の場合は異分野からの編入だったので、認定された単位数が想定よりも少なく、3年間で卒業する計画が予定よりも大幅に延びることになってしまいました。
大学内で建築学科から機械工学科に転科して3年間で卒業する道もありましたが、同じ機械工学を勉強するのであれば高専の方が私にとってメリットが多かったので、大学は退学し専攻科*5に入学して高専に戻ってきました。
*4 本科卒業後の進路・・・大学学部への編入学、高専専攻科への進学、企業への就職が主な進路となっています。詳しくはこちらの「進学状況」「就職状況」へ
*5 専攻科・・・本科卒業後に進学することができる教育課程(2年間)のこと。専攻科を修了した者は、大学改革支援・学位授与機構の審査に合格することにより学士の学位を取得できます。詳しくはこちら
本科2年生からのコースで、生産システム工学コースを選んだ理由は何ですか
高専1年生のときには機械工学や電気工学など様々な分野の実験実習を体験しましたが、その中で、電気やプログラムのように目に見えないものを作るよりは、機械加工されたような実際に手で触ることができる物を作りたいと感じました。
機械システム工学コースと生産システム工学コースでは、それを叶えることができますが、体験入学で3D-CADを使ってものづくりをした衝撃が強かったこともあり、生産システム工学コースを選びました。
専攻科ではどういったことを学ばれましたか
機械工学コースに進み、流体工学*6について勉強できる研究室に所属していました。研究活動では、現在私が勤めている株式会社日本計器製作所との共同研究も行っていたので、学生時代の研究内容がそのまま就職先の仕事内容につながる形になりました。
*6 流体工学・・・流体の静止状態や運動状態での性質、また流体中での物体の運動を研究する、力学の一分野のこと。空気力学や水力学もこの分野。
産技高専時代で印象に残っていることはありますか
バドミントン部で卒業生(OB)の先輩と活動できたことです。年に一度、バドミントン部ではOB会という卒業生との交流会があり、その中では年齢が5歳以上も離れた先輩と対戦をすることがあります。相手が大人ということもあり緊張しましたが、良い経験ができたと思います。今では自分がOBの立場になり、毎年の交流会に参加しています。
年齢の離れた先輩と交流をもつことで、学べたことは多かったです。社会に出ると、お世話になる方に対して「今日は宜しくお願いします」というような挨拶が大切になると思いますが、学生の頃から先輩方にその様な挨拶を教えてもらうことができました。
印象に残っている授業はありますか
高学年で勉強する機械系の専門科目と数学です。もともと物理と数学は苦手で、低学年の時には「サイン・コサイン・タンジェントとか、微分・積分なんかいつ使うんだよ」と思いながら勉強していました。しかし、4年生、5年生で学ぶ専門科目ではそれらを活用することも多く、「この時のために数学を勉強していたのか」と感じることの連続でした。
産技高専で学ぶ上でのメリットや良い点を教えてください
世代の違う人と接することが多いのはメリットだと思います。
高専は5年間通うということもあり、年齢の離れた先輩あるいは後輩と接する機会が多いです。そういった環境にいたので、社会に出てからは世代の違う方とお話することに特に抵抗が有りません。
産技高専時代にやり残したことはありますか
苦手な科目を、苦手なままで卒業してしまったことです。最近、会社で私が学生時代に苦手な科目に関する仕事をすることになりました。仕事内容はそこまで難しくないのですが、苦手意識が抜けきらないのでとても苦労しています。学生のうちに、せめて苦手意識を無くしておけばよかったですね。
今、会社ではどのようなお仕事をされていますか
電子機器の換気冷却・排熱に利用する小型ファンモータの設計を行っています。特に弊社では国内メーカのカーナビの半導体冷却用に数多く採用され、他にもロボットのPepperにも利用されています。Pepperを見るたびに、うちのファンが使われているんだなと私たちの仕事を実感しています。やはり、ものづくりを仕事にしている方はみんなそうだと思いますが、世の中で自分が作ったものが使われているのを見ると、この仕事をやっていてよかったと感じます。エンジニアとして最大の喜びですね。
現在の進路に進もうと思った理由
大学を辞めて戻ってきて、2年間専攻科で勉強して、このまま機械系に進むのかどうしようかと進路に迷っていました。専攻科で学んできたこととは全然関係のない仕事に興味を持ったこともあります。
しかし、「じゃあなぜ専攻科に戻ってきたのか?」と疑問に感じ、これまで学んだ知識や技術を生かした仕事に就いた方がいいと思いました。
これまで、進路の選択では常に軸がブレていましたが、それは自分に自信が無いからです。
学生時代の友達や先輩は私よりも頭の良い人がほとんどだったので、私は常に負い目を感じて、将来はどの会社に行っても役に立てないんじゃないかなという恐怖がありました。そんなこともあり、機械系の世界だけでなく色んな方面に目を向けてきました。
ですが最終的に、新しくやりたいことを探すよりも、今自分ができる範囲の中で社会に貢献できることを仕事にしようと考え方が変わり、その中で自分には一体何ができるだろう、と考えた結果が専攻科で研究していたファンモータのものづくりでした。専攻科で2年間研究してきたので、これならば、といった感じです。
働く上で大切にされていることを教えてください
難しい仕事や大変な仕事を頂いたとしても、自分にその仕事が来たということは、少なからず 「この人ならできるかも」 と考えてもらえていると思うんです。そういった方々の期待にはなんとか応えたいですし、自分のスキルアップにも繋がればと思って、頂いた仕事には全力を尽くしています。
今後のキャリア展望や夢について教えてください
一つの分野のプロフェッショナルというよりは、いろいろな分野のことを学んでマルチな設計者になりたいと思っています。苦手分野の仕事が最近増えていると言いましたが、ちょうどいい試練だと感じています。
産技高専に戻りたいと思いますか
懐かしいし、いい思い出もいっぱいありますけど、精いっぱい今がんばっているので、戻りたいとは思いません。と言いながら、一度専攻科には戻りましたけどね。
最後に、受検生や在校生に向けてメッセージをお願いします
何でも自分が好きなことを5年間楽しんでやってくれれば一番いいなと思います。絶対にその方が楽しいですし、5年間続けたという自信にもつながります。私は部活動を中心に頑張っていて、とても楽しかったですし、自分自身の成長にもつながったと思っています。そういった経験もあり、社会人になった今では一つ目標を達成したあとに、さあ次はどんなことをしようかと常に前向きな気持ちになれるようになりました。なので、学生時代を精力的に過ごしてもらえればいいなと思います。
あとは、成績トップでもビリでも、とりあえず高専生活をやりきってほしいです。高専の中にいると周りの優秀な人と比べてしまって劣等感を感じることもあるかもしれないけど、社会に出てしまえばみんな同じ高専卒です。自信をもって、頑張ってください。