森岡さんインタビュー(平成30年10月)

都立産業技術高専 卒業生インタビュー:森岡さん

森岡さん
平成22年度 本科 ロボット工学コース卒業
奇術部所属
現在 鈴茂器工株式会社 所属
平成30年10月インタビュー


森岡さんは、荒川キャンパスのロボット工学コースで学び、卒業後は寿司ロボットで有名な鈴茂器工株式会社へ就職されました。今回は本校や企業での経験を通した成長について伺いました。

産技高専を志望された理由は何ですか

中学生の頃は、技術系の授業だったり、プラモデルをつくったりすることが好きだったため、工業高校に進もうと思っていました。進学先を検討していくなかで産技高専のことを知り、工業高校と受検日が異なるということもあり、産技高専も受検しました。結局、両方とも合格したのですが、より専門的なことを学べそうであった産技高専に進学しました。あのとき工業高校へ進んでいたら、今の自分はないと思うと面白いですね。

本科2年生からのコースで、ロボット工学コースを選んだ理由は何ですか

昔、ロボットアニメが好きだったこともあり「どんなことをやるんだろうな」という純粋な興味で、ロボット工学コースに進みました。入学して、家から近い荒川キャンパスで一年過ごして、コースによって多少の違いはあるけど、ロボット工学コースは浅く広くいろんなことを学べて魅力的に感じました。

産技高専時代で印象に残っていることはありますか

奇術部での活動は楽しく印象に残っています。今でもそうですが、当時から人前に出るのはあまり得意ではなかったんですが、文化祭で観客にマジックを見せて楽しんでもらえたときは嬉しくて、その瞬間は印象に残っています。
今でもマジックしないの?言われることもありますが、最近は練習してなくて、断っています。笑

印象に残っている授業はありますか

実習で、大型工作機械を使って自分たちで部品の加工をしたり、プログラミングを行ったりした授業が印象に残っています。中学生のときには使ったことがないようなものを使用して授業を受けたのは、なんだか大人になったような感じもして印象的でした。

産技高専で学ぶ上でのメリットや良い点を教えてください

一年生のうちはコースに所属せず、みんな共通のことを学ぶので、自分がどの方向に進みたいかを良く考えてから、所属するコースを選択できることが良い点だと思います。
一年生の頃からコースが決まってしまっている高専もありますが、それだと「なんかこのコース違うな」と思ったときに戻れないので、一年生のころになんとなくでも自分に合った進路を決められるのはいいことだと思うし、それを考えるための時間と材料が与えられるのはいいと思います。

産技高専時代にやり残したことはありますか

資格を取ったり、何かもっと挑戦しておけばよかったなと思います。奇術部に所属したのもある種自分にとっては挑戦でした。

今、会社ではどのようなお仕事をされていますか

米飯加工機*1の設計担当として、部品の選定や回路図面の作成、プログラミング等を行っています。機械の形といったハード面については別部署が担当していますが、機械の中身、つまりどうやってその機械を動かすのかといったソフト面を担当しています。
例えば部品の選定だと、モーターをいくつ使う予定だからこの電源装置を使おうみたいなことを考えながら働いています。

*1 米飯加工機・・・寿司ロボットなど米飯を成型・加工する機械のこと。

鈴茂器工株式会社が開発した初めの寿司ロボット
 

産技高専での学びや経験は今のお仕事等に役立っていますか

会社でやっていることと学校で学んだことは違うので、直接的に役立ってはいません。例えば、大型の工作機械を学校では使っていましたが、今は使っていないです。
ただ、学校でいろいろなことを学んだおかげで、「なんとなく図面がわかる」とか「なんとなくプログラミングがわかる」といったように「なんとなくわかる」っていうことが多いですね。素養がついたと言えるかもしれません。

現在の進路に進もうと思った理由

就職する気はあったんですが、イマイチ気持ちが向かなくて就職活動を後回しにしていました。就職活動を始めたのも6月で遅く、一社受けて選考結果が出るまで他のところを受けずに待ったりしていました。マイペースにやっていたなと今でも思います。
そんな様子を心配されたのか、就職支援室*2の先生に今の会社を勧められて、当時チェーンの回転寿司屋でアルバイトしていたこともあり「あのロボットをつくっている会社か・・・面白いな」と思って受けたら、今の会社に内定をいただきました。マイペースにやっていたおかげでいい会社に決まったので結果的に良かったと思います。笑

*2 就職支援室・・・産技高専では、両キャンパスに就職支援室を設置し、求人の紹介などの情報提供と、学生の希望と適性を考慮した就職支援をしています

働く上で大切にされていることを教えてください

「挑戦する」という気持ちを大切にしています。

私が今担当している設計という仕事は、競合他社に負けないように機械のクオリティを上げ続けないといけない仕事です。同じような機械製品でも、部品の選び方や回路設計の仕方によって、性能が良くなったり、コストが安くなったりするので、ここで努力・挑戦しないと直接売り上げに響くので重要な仕事です。
ただ、今の会社に就職した当初は、学生時代の気持ちも引きずっていて「新しいことやめんどくさいことはやりたくないな」という気持ちが若干ありました。実際に自分が作成したプログラムを先輩社員に見られて「もっとここをこうしたほうがいいんじゃない?」という提案を受けたことがあります。しかし、それをするためには大幅な変更を加えないといけなくて、正直やりたくなくて「ちょっと難しいです」と断りました。そのときにこの仕事の重要性や積極的に動くことの大切さを説かれて、新しいことやめんどくさいことをやらないのは簡単ですが、より良いものをつくるためには、いろいろ挑戦してみないとダメなんだなということに気づけました。

気づきがあって、どのような変化がありましたか

断ることが少なくなりました。何かを提案・依頼されたときに、難しいことでも「ちょっと難しいです」で終わらせるのではなく「ちょっと難しいですけど、考えてみます」というふうに考えたり、答えたりできるようになりました。例えば「コスト、これくらいに安くならない?」と言われたときに、同じような部品で安いものはないか調べたり、回路設計を工夫したりして、最初からあきらめるのではなくて、ちゃんと調べたり、考えたりして良いものをつくるための可能性を探すようになりました。まあ、大概の場合はできないんですけど。笑
クオリティを上げるというのは“プラスアルファ”のことで、機械製品を世に出すという観点だけだと別に挑戦しなくてもいいことです。クオリティを上げるためには、新しいものを取り入れて、それを取り入れるために勉強しないといけないので大変ですしね。
それでも前向きな考え方になれたのは自分にとって、とても有意義なことだと思うので、今も挑戦し続けていきたいと思っています。

今後のキャリア展望や夢について教えてください

ネットワークを利用した機械に関わることがあり、そのような技術に興味を持ったので、将来的にはIoTやビックデータを利用したものづくりをしていきたいと思っています。それだけにこだわらず、最新の技術も勉強して、自分の仕事にどんどん利用していけるようにして、「できたらいいな」を形にしていきたいと思います。

「できたらいいな」を形にしていきたい

産技高専に戻りたいと思いますか

学生時代は楽しかったですし、就職してからは友人と会う機会も減りましたが、学生時代のことは良い思い出として残っているため戻りたいとは思いません。当時があって今の自分があると思います。

最後に、受検生や在校生に向けてメッセージをお願いします

5年間は長く大変かもしれませんが、あっという間に過ぎてしまうと思います。せっかくの時間を無駄にしないためにも、ぜひ自分がどうしたいか、どうなりたいかという目標を見つけて学校生活を楽しんでほしいと思います。
私は学生時代、自分で言うのもなんですが、どちらかというとフラフラ過ごしていました。「特にこれがやりたい!」という気持ちもなく、ただ今やらなければいけないものをこなしていくというか・・・だからこそ皆さんには自分が挑戦できる目標を見つけてほしいと思います。


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